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辛口と甘口



精神病院に入院していた父に末期の肺がんが見つかった、去年の9月。精密検査を受けさせたくても、専門医に連れていけないほど衰弱し、人生の着陸体勢に入った事を、私たち家族は受け入れざるを得なかった。


それから2週間。それまで「患者友人」だった私は、「患者遺族」になった。


そして、10ヶ月後。ちょっと早めに、一周忌法要。


とにかくアルコールが大好きだった父。父の好みは、ビールは「ドライ」、日本酒は「辛口」。

対する私の好みは、ビールは「旨み」、日本酒は「甘口」。


父と私は互いに譲歩することはなく、二人が揃う食卓には、別々の銘柄のビールと酒が並んだ。今になって、当時の母の苦労を知った。


アルコールは「辛口」を好んだ父は、自分自身にも「辛口」評価だった。もう少し自分自身に「甘口」だったら、晩年の人生は違ったかもしれないなぁと、一周忌法要で父が好んで飲んだ銘柄を口にしながら、考えてしまった。


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たくりん (肺がん患者遺族・40代/亡くなった父は74歳)

※私はがんではありませんが別の病気で闘病中です。

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